【佳作】
【テーマ:仕事とお金】
仕事とお金
日本大学三島高校  匿名希望 16歳

私は昔、母に言われて、朝学校へ行く前に廊下と玄関の掃除をしていることがあった。掃除といっても雑巾掛けをするわけでもなく、クイックルワイパーのような用具を使ったり、ほうきで掃いて、ちりとりで集めるだけのもの。最初は学校に遅れそうになるし、朝早く起きれないしで、本当に嫌だった。しかし、やっているうちに手伝いをさせられているのではなく、これは私にとって仕事なんだと思い始めた。それからというもの、朝はしっかり起き、学校に遅れそうになることがなくなった。何より家族皆に、笑顔で「ありがとう」と言ってもらえるのが嬉しかった。

ところがある日、外の風が強く、戸を開けたまま玄関の掃除をすることが困難で、掃いても掃いてもゴミが外に出なくて、玄関があまり綺麗にならないことがあった。すると、汚いままの玄関をみた母から私は、「今日どうして汚れているの、いつもはもっと綺麗に掃けるのだから、ちゃんとやって」と怒られた。その時私は、これは自分の仕事なんだ、もっと工夫して綺麗にしなきゃいけないんだと自覚した。それからはどんな理由があろうと、絶対に綺麗で、皆の気分が良くなるように工夫をしながら掃除をした。

そんなある日、私は母から500円をもらった。「この頃すごく工夫して、頑張って掃除してくれるからね。お仕事ご苦労様」と言って。毎月お小遣いをもらっていたし、欲しい物は親が買ってくれていたから、私はカルチャーショックを受けた。それを察した母は私に、「お金はただ働くだけではもらえないもの。たくさん工夫して、たくさん頑張った人がもらえるもの。その工夫や頑張りが大きい人ほどお金がもらえる」と教えてくれた。それに納得した私は、その後も頑張って掃除した。それから母は月に一回お小遣いとは別にお金をくれるようになった。最大500円、最低0円だ。掃除に慣れてきて少し手を抜いたりすると、300円になったりする。しかし、張り切って掃除をして綺麗になっていると500円といった感じ。その時私は、お金をもらって仕事をするというのはこういう事なのだと思った。全てが等価交換のような仕組みになっているんだな、と。いくら沢山の仕事があってもそれはお金とイコールではない。仕事を頑張ってすることによって、ようやくお金がイコールになるのだと。

私は母のお蔭で、仕事とお金について、経験をもって学ぶことができたと思う。私にとって、とても良い経験となった。私と同い年の人たちでバイトをしている人や職についている人も少なくないと思う。しかし私はバイトをしたことも、職に就いたこともない。この先、私は社会に出るのに沢山不安があるし、心配だ。でも、母が私に教えてくれた、仕事とお金のこと。これはどの社会にも共通している点があると思う。世の中が全て等価交換のサイクルでできていて、何事も一生懸命に取り組むことがとても大切だということ。仕事とお金について、とても難しいことだと思うけれど、母に教えてもらったことをさらに掘り下げて、いろいろともっと沢山のことを理解していきたい。

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