【入選】
【テーマ:私を変えたきっかけ】
働くこと
日本大学商学部経営学科1年  大平 誉 19歳

実はこのクラスの担任になる前に教員を辞めようとした。でもお前達と出会って教員という仕事を辞めなくてよかったと思っている。一人の教員を救ったことを自信にして、これから社会で役に立てるような人間になってください」高校の卒業式で担任が涙ながら語った。夢や希望で胸一杯になっていた私にとって衝撃的な発言だった。

私の担任は、何十年も教員としてたくさんの生徒を卒業させていた。いわばベテランである。しかし、私たちの担任になるまでの8年間はクラスを受け持つことがなかった。

私達のクラスはいい意味で明るくて元気で個性豊かなクラスだった。しかしそれが反面に出ることが多く、生徒と同時に担任も怒られて迷惑ばかりかけていたが、クラスに対して担任が怒ることはなかった。久々の担任で最初は不安で怒ることが怖かった、と後に話していた。それでも休日も学校で授業の準備をしたり、受験の時は、一人ひとりの調査書を書くため夜遅くまで学校に残っていることもあった。進路相談をすれば、親身になって一緒になって考えてくれた。それでも絶対に生徒の前では辛い顔なんて見せなかった。いつも弱音を吐かない担任の背中を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。そんな担任のおかげで卒業式前にクラス全員の希望進路が決まった。もちろん私自身も希望の進路に進むことが出来て、今、充実した大学生活が送れている。

働く、と言うこと。単純にお金を稼ぐことを目的に勤務地や職種を選ばなければ、働くことなら誰でも出来ると思う。実際にアルバイトの募集要項を見ても多くは、年齢制限が書いてあるだけでその時点では、誰でもアルバイトができる権利を持っているはずである。一番大切なのは打算や損得に関係なく、「本当に自分が何をすべきなのか考えて行動すること」だと思う。担任は授業をやるだけではなく、進路相談はもちろん、学校生活や部活のことも、自分の時間を割いてまで話を聞いてくれた。あの時、担任が一番大切に思っていたのは、生徒とその生徒の将来だった。

卒業するまでは単純に「たくさんの人を笑顔にしたい」としか思っていなかった。どんな職業に就こうと相手にも自分にも笑顔を絶やさないようになりたいと思う気持ちは変わらないが、担任の教員という仕事を通して「社会で役立てる人間になる」ことが今の夢である。大学を卒業して担任と同じ「社会人」になった時、誰かのために役に立てるようになりたい。そして、大切なことを教えてくれた担任に恩返しするためにも更なる夢に向かって、今を一生懸命に生きていきたい。

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