【佳作】
【テーマ:仕事とお金】
仕事の原点 〜食う為、生きる為〜
神奈川県 川崎市  リコ 40歳

小2の息子に、どうしてパパは仕事に行くの?と聞かれることがある。そんな時私は、仕事をしないと死ぬからだよ、と答える。子供はきょとんとした顔をしているが、続けて私は、とくとくとその事について解説する。

「例えば動物は、木の実を採って食べたり、他の動物を殺して、それを食事として食べているでしょ。人間もご飯を食べないと死ぬよね。でも人間は、動物みたいにその辺にあるものを捕って来て食べるシステムじゃなく、お金で食べ物を買うでしょ。だからイコールお金が無いと食べられなくて死ぬ。だからお金が絶対必要なの。
 お金っていうのは、木に生っている訳じゃなく、その辺に落ちている訳でもない。働くと、お金がもらえるんだよ。そのお金で、食べることもそうだし、お家に住んで雨風凌いだり、洋服が買えて、裸でいなくて済む。
 これがもし、お金が無かったら、お腹を空かせて、裸で外をぶらぶら歩かないといけないよね。どう?お金がなくていいと思う?」子供は首を横に振り「いやだ」と答える。どうだろう・・私の説明は極端だろうか・・

現代は、職業選択の自由とか、好きな事を仕事にするなどの考え方が主流になっている。もちろんそれでいいと思う。自由はすばらしい。感謝すべき事だ。でも、やりたい事、好きな事が無い人はどうだろうか。この、何をやりたいかわからない人は、かなり多いのではないだろうか。自分はやりたい事も見つけられず、好きな事もわからない。こういう人はなんとなく遅れをとってしまっている気がしてしまうのが、問題点だと思う。やりたい事がわからない、ということよりも、やりたい事がわからない事に引け目を感じてしまう事の方が問題ではないだろうか。

もうすでに働いている人も、毎日満員電車に揺られ、上司に怒られ、お客に怒られ、やっている事はさして楽しくもない仕事。「ここは自分の居場所じゃない、もっと楽しめる仕事がしたい、自分の能力をもっと活かせる仕事がしたい、こんなの自分のやる仕事じゃない、もっとみんなに称賛される仕事がしたい、そんな思いが風船のように膨らんで、ある時ボンッと破裂する。そして会社に退職届けを出す。

職を変える事は悪い事ではないと思う。私も転職経験者だ。でもだからこそ、ちょっと待ったと言いたい。

他に移ったからといって、想像通り輝く毎日がやってくるのか。恐らく、輝く部分もあるとは思うが、しょっぱい出来事もたくさんあると思う。人生は、好ましい事と好ましくない事、必ず両方あるから。

好きを仕事にしようといった風潮だと、特に好きでもない仕事をしている人は仕事に嫌気がさしてくると、ここは自分の居場所じゃない、本当のもっと輝く自分でいられる仕事があるはずと、逃げに拍車をかけてしまう。結果的に仕事が嫌になる度に職を変え転々とすることになる。そんな時は、食べる為、生きる為、に働くんだ、いう原点に返ってみてはどうだろうか。とても大切な根本だと思うが、案外忘れているのではないだろうか。所帯を持たない若い人には更にぴんと来ないかもしれない。

「夢は特にないです。でも食べる為、生きる為に一生懸命働いています」いいじゃないか。最高だと思う。自分の餌を自分で捕って生きていたら、もうそれだけでその人は、NO1だ。世界一だ。ご先祖様だってOKをだしてくれるはず。

だいたいどんな仕事でも、一生懸命やっていると、不思議とおもしろくなってくるものだ。はなっからこんな仕事、と思っていたらやりがいなんて見つかる訳がない。その、こんな仕事さえきちっと出来ないなら、何をやってもだめだろう。その人は自分で、こんな仕事もできない人間です、と公表しているようなものだ。

やりたい事、夢はありますか?と聞かれ、「生きる為に一生懸命働いて、お金を得る事です」こんな風に胸を張って言えたなら、その人はどんな仕事だって出来る気がする。

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